Feb 12, 2018

鎌倉市「和賀江嶋」観光・教育プロジェクト

和賀江島海岸の観光と調査への活用

市民及び研究者による調査を実施し
生物・環境及び歴史に関する観光・教育システムの確立を目指して

相模湾は明治時代、日本の海洋生物研究の発信地であった。この系譜は東大三崎臨海実験に引き継がれて以来今日に至る。また同じ三浦半島には、横須賀自然史博物館と観音崎博物館、そして葉山しおさい博物館の3つの地域博物館が現存し、小田原の生命の星・地球博物館、真鶴の遠藤貝類博物館とともに、海産生物の自然史を普及啓蒙してきた。

私は、横須賀自然史博物館の生物相調査員として久しく在籍し、三浦半島の生物相探査を経験したことから、その生物相のおおよそを把握する者のひとりである。しかし灯台下暗しで、地元逗子・鎌倉・江ノ島の海岸生物についてあまり注意を向けることなく今日まで来てしまった。およそ我が庭のように自然観察会など学びの場を牧歌的に主催してきたのだが、以下資料にあるとおり、近年、この磯の生物環境のかく乱が起きており、史蹟そのものの理解と保存、その自然の有りかたが大きく変わるのではないかと危惧するようになったことから、この存在価値を考えるようになった。

改めて生物の分布を詳しく観察すると、陸水による栄養の供給と海岸生物の関係を観察するにつけ、見事な適応分布を示す磯浜であることを再認識するにいたった。そこで、この事実を広く伝える市民活動を昨年開始したが、地域の貴重な自然資産として残すためには、科学的信頼性を獲得する必要があるところから、研究者との連携を深め自然観察という市民活動とも共同して、さらに精度を上げようと以下に述べる調査を始め、さらなる計画を建てている。


和賀江嶋和賀江嶋(和賀江湊)の江戸期を想定した復元図/国土交通省

 

昨年度までの簡易調査
①2006年~2008年の潮間帯のスノーケリングによる潜水調査において76種の魚類を観察した。その後の活動によって新たに確認された魚種は、10種以上にのぼり、材木座海岸の地引網、漂着する幼魚、滑川河口汽水域で採取したものを合わせると100種に迫る。

②昨年、調査会社による和賀江嶋周辺部海底の潜水調査をおこなったが、合わせて同定可能な漂着海藻を合わせて調べたところ、合計で67種を確認しリスト化した。

③無脊椎動物に関しては、調査継続中である。貝類を研究している地元アマチアグループは、これまでの調査から微障害を含む貝類についてレポートを作成している。また個人の愛好家も多数採集を行っており、これらの方々からのご協力と連携を頂きながらデータのまとめを行っている。これら生物のリストは、県立生命の星地球博物館と共同(海洋生物REDデータ化も実施中)して、国立科学博物館の生物リストに登録を行う。

④和賀江嶋の海岸生物相には、干潟や汽水域に特徴的な生物種が存在している。後背地から流れ下る湧水や滑川からの沿岸水が澪の存在とともに栄養水の供給により現れたものと考えられる。

⑤世界遺産登録に向けて準備に使われた文献の整理並びに、新たな文献を渉猟すべく神奈川県立金沢文庫、鎌倉市歴史文化交流館と連携して調査を実施する。責任者は、世界遺産宗像遺産群委員の清野聡子(九州大学)、押田佳子(日本大学)は、観光資源、文献調査の観点から監修する。

和賀江嶋 春の大潮時の景観 かつて港を形成していた伊豆石が生物のサンンクチュアリとなり、自然観察の貴重な場所となってきたが、近年、このような乱獲にあって生物が減少している

鎌倉期後期に成立した代表的な文献は、「吾妻鏡」であるが、これを保管する資料となるのが、当時の鎌倉のありのままを伝える「海道記」である。以下、「海道記」の解説。※クリックして開いてください。

海道記

和賀江嶋における海岸環境と海岸生物相は、この磯の賽の河原のような一見した印象とは裏腹に見事な海岸生物環境を保存し、汚染水などのかく乱も無く存在している様は、日本でもトップクラスの活動人口を抱える地方都市の海岸としては貴重である。これが損なわれる前にその存在を観光や地域教育へ活かし保存すべきかと考える。

幸いにして、海岸生態工学研究者である九州大学清野准教授の調査支援が頂けることになった。また、東京大学新領域研究大学院の学生による演習地として、今年度から滑川流域が選定され、地球の楽校が地域サイドのコーディネータとなた。最終的には、滑川流域と由比ヶ浜・材木座両海岸との水質(栄養)循環の動態について(一般にいわゆる流域生態系を明らかにする本格的な研究手法は確立途上にあり、現在、私達グループ内に専門の研究者がいないことから、これを示唆できる程度までと考える)考察できるまで行う、という目標を立てている。淡水の流入と海中のおける移動の様子を明らかにし、和賀江嶋の生物多様性との関係を信頼のおけるデータにより裏付けることにより、材木座海岸と後背地からの湧水との一体性が説明できる。

このような仕事は、本来地域博物館の仕事であるが、鎌倉市にはそのような組織が無いことから、まずは地球の楽校において調査チームを編成し、博物館や地元行政とも連絡をしこの計画を進めたい。

この計画の成果目標

①海岸生物目録の作成。
②淡水(栄養物)動態の把握。
③和賀江嶋とその周辺の栄養循環の想定図の作成。
④同時に国の史跡指定を受けていることから、文献による調査を行い、和賀江
嶋の実態を研究する。
⑤これらを鎌倉森と海の自然ガイドブックとして編集し配布物を作成する。
⑥調査活動を模擬的に体験できる市民向け体験プログラムを開発する。
⑥観光ガイドプログラムとしては、新たな鎌倉像を提示する。
⑦県・市の担当部署と連携し、目録とガイドブックを活用した地域の観光への
貢献を行うと共に、海岸環境の保全にも寄与する。

以上は、これまでの仕事とこれからの目標を記した。

一般社団法人地球の楽校 代表理事 長谷川孝一

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